俺は作家じゃない。泥棒だ。盗むのは得意だ。文章を書くのは苦手だ。とにかく、錠前破りについて書く。前に、錠前の設計の本を読んだことがある。いい本だった。参考になることが、いろいろ書いてあった。

 錠前の鍵穴が、傾いてるやつがある。いつも、曲がったピックを持ち歩くこと。そういう錠前には、曲がったピックがいい。俺はそうしてる、それでたくさん錠前を開けた。銅でできたピックを持ち歩くこともある。銅は曲げやすい。その場で、錠前に合った形に曲げられる。でも、銅のピックは壊れやすい。気をつけること。

 錠前のばねにも、ときどき変なやつがある。全部が違うふうにはね返るから、開けるのが難しい。そういう時は、たいまつの火を錠前に近付ける。そしたら、錠前が熱くなる。熱くなったら、ばねは全部同じようになる。同じようにはね返るんだ。これをやるときは、火傷しないように気をつけること。

 泥棒の中には、字が読めないやつもいる。字が読めないなら、誰か読めるやつにこの本を読んでもらえ。そしたら意味がわかる。