第三紀412年 薄明の月8日

アミグリス(サマーセット島)

良き友、ジェミン卿へ


 宮殿であなたに個人的に会えないことをお許しください。悲劇的なことに足止めを余儀なくされてしまいました。正面玄関と扉には鍵をかけていません。もしこの手紙を読んでいたら、控えの間から東の応接室あたりに来ているはずです。おそらくすでに敷地を歩いて、ここに来る前に大理石と斑石でできた7つの噴水、反射するプール、色々な木々、5点形の柱列を見たことでしょう。この部屋は最初に通らなくてはなりませんから、この手紙を拾う前に2階の特等室や西の棟へ行ってしまったとは思いません。しかし、信じてください。素晴らしい手すり、らせん階段、居心地のいいサロン、そしてあなたの富にふさわしい寝室が美しく備えられています。

 この物件の値段は確かに途方もないものですが、最高のものだけを求めるあなたのような男性にとっては、持つべき別邸でしょう。お気づきのように、門を抜けて到着すると、まさに護衛所にぴったりの小さい建物がいくつかあります。あなたが安全面に気を配っているのは分かっています。

 私は非常に貪欲な男ですし、今日ここであなたに会い、ここを見せ、あなたのご機嫌を取り、この素晴らしい家を買うときに販売価格をいい値で売ること以外に望むことはありません。言いわけできない不在を引き起こした板挟みの状況は、あなたの視察に備えてここがきれいになっているか確かめようと早めに到着してすぐに起こりました。コニンジという男が私の背後に忍び寄り、喉をつかみました。左手で口と鼻を塞がれ、右手で押さえつけられました。甲状軟骨のすぐ下の喉の柔らかい部分を潰され、しばらくはがいじめにされました。とても苦しい数分間でした。

 私は今、トリニマック変革の珍しい彫刻近くの北の彫刻庭園にある落ち葉の山の下に埋められています。発見されるまでそう長くはかからないはずです。銀行の者が誰かそのうち私の不在に気がつくでしょう。コニンジは私をもっと深く埋めたかったかもしれませんが、古くからの相棒チャーウィッチの到着に備えたがっていました。

 おそらく、あなたはそろそろ読むのを止めたほうがいいと思っていることでしょう、ジェミン卿。あなたは控えの間を見廻し、扉を見ています。庭園から入ってきた大きな扉は、今あなたの後ろで鍵がかけられました。あなたは、この家の設計を知りません。廊下を走るのもお勧めできません。どうせ行き止まりになっているでしょうから。だめです。読み続けて、これがどうなるのか見届けたほうがいいでしょう。

 コニンジは友達のチャーウィッチと相棒関係にあり、アズラの星を取り戻そうとしていたようです。彼らは、ハドワフ・ニスウィルという名の男がデイドラの王子アズラを呼び出し、アズラの星を手に入れたことを知っていました。ニスウィルがハイロックから出た時、チャーウィッチは彼を探しにそこへ行き、相棒のほうはモロウウィンドを探しました。彼らは互いが発見したものを、配達人を通じて報告し合おうと考えていました。

 チャーウィッチの最初の手紙には、ニスウィルにはバリアシルという名の謎の後援者がいること、墓地でぺリラという名の姉妹とオオカミ人間の管理人について知った事が書かれていました。コニンジはバリアシルについて何も分からなかったが、ニスウィルは星を手に入れた後ぺリラと一緒にハイロックに戻ってしまったのではないかと返事を送りました。チャーウィッチの最後の手紙は、強力なデイドラの王とされていたバリアシルとの戦いで負った致命傷に耐えながら、死の床で書かれたものでした。

 コニンジはこれに深く悲しみ、チャーウィッチが滞在していた家のムーリング夫人に追悼の意を示すため、帝国からウェイレストに向かいました。いくつか問い合わせをして、彼はこの夫人が突然町を去ってしまったことを知りました。夫人はチャーウィッチという名の客をもてなしていました。そして誰も彼の死体を見ていないのに、彼が死んだことは理解されていました。確かに、去年のラスト・シードの13日に夫人の家に送られた医者はいませんでした。テル・アルンでもそうだったように、ウェイレストでバリアシルのことを聞いた者はいなかったのです。

 哀れなコニンジは突然何もかも分からなくなりました。彼はボリアンネとグリムトリー・ガーデンへ行き、亡くなった相棒の跡をたどって、ドウィンネン男爵領にある小さな町にニスウィルの家族の地下墓地があることを突き止めました。幸運なことに、オオカミ人間の管理人が人間の姿でいました。(首を絞めたり緩めたりを繰り返す技を使って)問いただすと、管理人はコニンジに何ヶ月も前に彼がチャーウィッチにした話をしました。

 ハドワフとぺリラ・ニスウィルが古い仕事を終わらせるためにドウィンネンに戻りました。アズラの星が力を得るためには秘められた魂を必要とし、彼らは家族の墓にいるウェアウルフの魂を捕まえることで少しずつ始めようと考えたのです。しかし恐ろしいことに、それは彼らの理解を超える存在でした。哀れな管理人がある朝人間の姿に戻ると、血まみれで引裂かれたニスウィル兄弟の横に横たわっていることに気がつきました。絶望と恐怖で、管理人は死体と彼らの持ち物を地下室に持って行きました。死体とその持ち物はチャーウィッチが来たときまだありましたし、アズラの星もあったのです。

 コニンジは今やはっきりと分かりました。チャーウィッチから受け取った手紙は、コニンジを遠ざけるための嘘だったのです。疑いようもなく、新しい相棒のムーリング夫人の助けを得て話をでっち上げたのです。自分の死も含めて、コニンジに星の探索を諦めさせようと欺いたのです。友情の本質を知るには残酷すぎることでした。そして、必ず報いを与えなければならないことでした。

 コニンジが昔の相棒を見つけるのに6ヵ月ほどかかりました。チャーウィッチとムーリング夫人は富と権力を得るために星の力を使いました。彼らは、ハイロックやスカイリムからヴァレンウッドやサマーセット島を下るまで、たくさんの異なる身元で姿を偽りました。素晴らしいデイドラの秘宝がいつもそうであるように、もちろん途中で星は消えてしまいました。2人はまだ十分に豊かでしたが、彼らの愛は悲しくも困難な時期にさしかかりました。アリノールに着いたときに、2人は別れました。

 彼らが一緒にいた数ヵ月の間に、チャーウィッチがムーリング夫人にコニンジのことを話したはずだと思わなければなりません。恋に落ちている2人が不思議で危険なバリアシルのことを彼に話すのを笑っているのを考えるのは楽しいものです。しかし、チャーウィッチは元恋人に正確な身体的な描写を教えるべきでした。というのも、ムーリング夫人が(カウンテス・ジリアナという身元でしたが)コニンジに会ったとき、彼女は彼が誰なのか気がつかなかったのです。彼に押さえつけられ、元恋人のことを問いただされた時、さぞ驚いたことでしょう。

 彼女は死ぬ前に、チャーウィッチの新しい名前と肩書き、そしてどこに新しく住む所を探しているかをコニンジに言いました。彼女は私のことさえも喋ったのです。ねじくれた最後の数ヶ月の逃走を考えると、チャーウィッチがどの家を買おうとしているのか、それを見に行くのは何時なのか知るのは難しいことではありませんでした。それから彼は単に早く到着して私を始末し、そして待たなければなりませんでした。

 これで我々の話は残念にも終わらなくてはなりません。すぐにお会いできるのを心待ちにしています。



元地所担当銀行員、シリックス・ゴイニシより




追伸: チャーウィッチ、振り向くかどうかは君しだいだ。君の友、コニンジ