ナイチンゲール
第1巻: 我々は誰か

ガルス・デシデニウス 著




 ナイチンゲールとして、羊皮紙にペンを走らせ教団の知識に関して私の考えを記録する義務があると思う。もしナイチンゲールがタムリエルから消える日が来たら、我々がどういう存在だったかを思い出させ。目的や動機に関する噂や風聞を晴らすためにこの書を使ってほしい。

 三人衆は、暗黒の女帝にして黄昏の娘、女公ノクターナルに仕える。世界中の盗賊の後援者ではなくとも、彼女を我々の後援者として信じている。祈りも施しも祝うこともなく仕える。ノクターナルとの絆は「誓約」として知られる商取引の形式をとっている。彼女の条件は簡潔で拘束力がある。ナイチンゲールとしてノクターナルの聖堂、黄昏の墓所を脅威から守らなくてはならない。その代わり、ナイチンゲールとしての力を自分や盗賊ギルドの蓄財に使える。

 我々が死ぬと、契約が果たされたとノクターナルが感じる時まで、ガーディアン・スピリットとして黄昏の墓所に縛られる。最終的には、ノクターナルの領土のエバーグロームへと辿り着く運命にある。そこでは霊魂は影と1つになり、仲間の盗賊の試みを隠す覆いとなる。これが盗賊ギルドで言われている“影とともに歩まん事を”の本当の由来だ。

 黄昏の墓所は聖堂以上の場所だ。この世界からエバーグロームまでの水路があり、エボンメアと呼ばれる真夜中の液体溜まりが渦巻いている。これが墓所の中心で、世界中にあるノクターナルの影響力の源だ。エボンメアは鍵穴から特有の鍵を抜くことで封印できる。この鍵こそ、時に墓所の壁をはるかに超えて道を見つける、ノクターナルの不壊のピックとして有名なものだ。

 不壊のピックはよく勘違いされる秘宝である。手に入れようとする者の多くは潜在能力のほんのわずかしか使えない。ほとんどは珍しく壊れないロックピックと思っている。間違ってはいないが、この道具の驚異は所持者が精神を拡大し“解除”の定義を概念化する意思がある時にのみ理解できる。これは単なる扉と門以上の意味がある。適切な者の手に渡れば、未知の能力を解除できる。この力の範囲はまだ分かっていない。誤った者の手に渡れば恐ろしいことになるだろう。

 ナイチンゲール三人衆の一員として、不壊のピックが黄昏の墓所から離れているのなら、それを取り戻す義務がある。そもそも何故ノクターナルが不壊のピックの盗難を許したのかが謎だ。この秘宝が起こす混沌を楽しんでいるという者もいれば、単に気にしておらず、人間とエルフの小競り合いなどは眼中にないと感じる者もいる。何であれ、墓所の領域内で安全に保管することは我々の義務だ。

 ナイチンゲールが神聖な教団だというのは我々を傷つけることになる。心の中は盗賊だ。狩りを楽しみ略奪を好む。ノクターナルに忠誠を誓い盗賊ギルドに対して多少影響力を持っているかもしれないが、ナイチンゲールはあくまで自分自身に最高の忠誠を誓っている。