~第四紀201年 栽培の月19日

一部の手下が卑しむべき経歴を持っていたおかげで、ムーンシュガーをスクゥーマに変える過程で血の泉の水を加える方法が見つかった。スクゥーマの効き目がはるかに強くなり、中毒性も高い。私たちは地下を隠れ家に作り変え、地元民の一部に“サンプル”を持たせて送り出した。人々をおびき寄せ、期待はずれだった泉を手軽に利用できる血の供給源に変えるためだ。

私たちはそれをレッドウォーター・スクゥーマと呼んでいる。どこかの常連客が“水”に気づいた場合に備えてのことだ。

部屋の中にたくさんあったボロボロの本は、泉に関するものであることが分かった。副作用を受けることなく水を飲めるようにするために、今後もこの書物の研究を続けるつもりだ。定命の者はありとあらゆる病に感染してしまうようだが、吸血鬼は能力が増す。と言ってもほんのわずかの間だけだが。

~第四紀201年 真央の月9日

見つけた書物の多くは、年月と湿気にやられてぼろぼろの紙きれと化していたが、ひとまず泉の起源については全容を把握できた。

第一紀の頃、泉はアーケイを祭った聖地として、レンガイアという司祭に管理されていた。私の研究にとって利益にならないことはほとんど省くが、どうやら彼が愛した女性は噛まれて吸血鬼となり、続いて彼のことも同族にしてしまったらしい。ふたりは泉の中で暴れまわり、水たまりの中で身を縮めてアーケイに加護を乞うていた他の司祭たちを殺してしまった。

“・・・そして私たちが背骨を引き裂くと・・・ ・・・最後の女司祭・・・ ・・・その内臓をブラッドストーンの聖杯に入れ・・・ ・・・水は永久に赤く流れ続けた・・・”

おそらくこの“ブラッドストーンの聖杯”が答えだ。

~第四紀201年 南中の月18日

何週間も調査を続けているというのに、未だになんの成果もない。ブラッドストーンの聖杯が泉の力を制御する鍵であることは、ほぼ間違いないと思われる。その聖杯がどこかの時点で遺跡から持ち去られたこともはっきりしている。

聖杯の図解が見つかったので、苦心してこちらにスケッチしてみた。だがそれが最後にどこへ行き着いたのか、その手掛かりは全く見つかっていない。

ヴェナルス・ヴルピンの研究