モロウウィンドでは、崇拝者も妖術師も位の低いデイドラを召喚し、奴隷や従者のようにこの世に縛りつけている。

 妖術師の召還するデイドラの奴隷のほとんどはわずかな時間で消えてしまい、命令系統もきわめて心もとなく、縛りつづけておくのは難しい。このおかげでデイドラの暴走を防げるのだから幸運と言えるかもしれないが、数分もあれば手ひどいダメージを追わせることができる。

 崇拝者はデイドラの奴隷を儀式や契約でこの世界に縛りつけることができ、デイドラの奴隷は少なくとも物質化した姿が破壊されたとしても、その元となる霊的存在がオブリビオンに逆流してしまうまでは、いつまでもこの世界にとどまれるようになる。遺跡や霊廟でデイドラを見かけることがあったら、彼らはこの世界の長きにわたる訪問者であると考えてもらっていいだろう。

 同じように、デイドラの主どもによって武器や鎧に縛りつけられる下級霊にも、わずかな時間だけ召喚されるもの、壊れたり消えたりしないかぎり存在しつづけるものがある。神殿の信者や召喚士の呼び出す魔力の武器や、鎧は効果があまり持続せず、「メルエーンズの剃刀(原文ママ)」や「醜いクラヴィカスの仮面」のようなデイドラの秘宝は効果が長いあいだ持続する。

 モロウウィンドの土着の宗教では、不滅のアルムシヴィに従属する下級の精霊としてデイドラを信仰している。アルムシヴィとは、アルマレクシア、ソーサ・シル、ヴィバク(原文ママ)が三位一体となった神である。下級デイドラは善のデイドラと悪のデイドラに分類され、善のデイドラはアルムシヴィの権威に服することをいとわないが、悪のデイドラはアルムシヴィに反抗的で、仲間よりも敵になることの多い背教者なのである。

 善のデイドラはボエシア、アズラ、メファーラである。ハンガーは「策略の父」ボエシアとつながっている強大かつ凶悪な下級デイドラである。しなやかで長い手足と尻尾を持ち、その顔は獣のようで、麻痺能力や武器や鎧を解体する能力で知られている。翼のあるトワイライトは薄暮と黎明の女神であるアズラの使者である。西方の野蛮なハーピーによく似ているが、ふくよかな体つきははるかに魅力的で、すらりと伸びた鉤爪は比べものにならないほど強力だ。蜘蛛のデイドラはメファーラの下僕で、蜘蛛と人間の中間のような姿をしている。禿げあがった頭、胴体、両腕はどれも人間のようで、8本の足を持ち、巨大蜘蛛の甲殻によって守られている。残念ながら、このデイドラはあまりに凶暴で理性に欠けるため、「紡ぐもの」メファーラの命令を忠実に守るとは言いがたい。そのため、モロウウィンドでこうしたモンスターを呼び出す、あるいは縛ろうとする召喚士はまれである。

 悪のデイドラはメエルーンズ・デイゴン、マラキャス、シェオゴラス、モラグ・バルである。すばしこくて煩わしいスキャンプ、猛獣のようなクランフィア、気高き死の番人ドレモラはどれもメエルーンズ・デイゴンとつながりのある下級デイドラである。ワニの顔を持つヒューマノイドのデイドラはデイドロスと呼ばれるモラグ・バルの僕である。いっぽう、体はいかついが血の巡りの悪いオグリムはマラキャスの奴隷である。シェオゴラスの下級デイドラである黄金の聖者は半裸の女性の姿をしており、魔法に耐える力がとても強く、危険な魔法使いである。

 モロウウィンドでしばしば遭遇するその他の下級デイドラに、四大元素をつかさどる精霊がいる。精霊とデイドラの主どもとのあいだに連帯感はなく、彼らと手を結ぶこともない。気まぐれに世界を渡り歩きながら、誘惑や衝動、あるいはタイミングによって立場を変えるのである。