シムレーンのアイカンター 著
人類がタムリエルを支配するようになる前、または歴史学者たちがタムリエル支配者の出来事を記録した年代記より以前の世界の出来事は、神話や伝説を通して、もしくは神々しくも見事な九大神教団の教義を通してでしか知ることができない。
便宜上、歴史学者たちは先史以前をさらに2つの長い期間に分ける-- 深遠の暁紀、そして神話紀である。
深遠の暁紀:
深遠の暁紀は人類の始まる前の、神々の偉業が起こっていた時代である。深遠の暁紀は、アダマンチンの塔を設立しようとする世界から神々と魔法が大量に集団流出して終焉を迎えた。
“Merethic”という言葉は、ノルド語の文字通り「エルフの時代」から来ている。神話紀とは、アダマンチンの塔を設立する世界から神々と魔法が大量に集団流出した後から、タムリエルにノルドのイスグラモルが出現するまでの先史時代である。
この後は深遠の暁紀でもっとも目を引く出来事、つまり我々のような時代の産物とされる生き物の出現が起こることになる。
宇宙はアヌとパドメイのオルビス(混沌、もしくは全体)から形成された。アカトシュ(アーリエル)が生まれ、「時」が始まった。神々(原初の神々)が生まれた。ロルカーンは神々を説き伏せ-- もしくは欺き― 定命の次元、ニルンを創造させた。定命の次元はこの時、魔力の高い危険な場所であった。神々が歩くと、定命の次元と永続する全存在物そのものが不安定となった。
「定命の世界」を設計する建築家、魔法(マグナス)はその計画を終結させることを決め、神々はアダマンチンの塔(ディレニの塔、タムリエル最古の建造物)に集結し、なにをすべきかを決めた。魔法が世界を終結させると、ほとんどの神はこの地を去った。残ったものは自分自身をほかのものへと形成し、現在もその地(エルノフェイ)に留まっている。ロルカーンは神々から非難を受け、定命の異世界へと追放された。彼の心臓は引き裂かれ、アダマンチンの塔から投げられた。そのかけらが地に降り立つと、火山が出来上がった。魔法(深遠の感覚能力)により、宇宙は安定された。そこから最終型である11の歴史が始まった(神話紀2500年)。
神話紀:
初期のノルドの学者によって、神話紀の年月は「時の始まり」-- キャモラン王朝の設立、第一紀の0年度と記録される-- から後方へと逆順することが解明された。神話紀に起こった先史の出来事は、彼らの伝統的なノルドのエルフ日付で記されている。ハラルト王の学者たちによって引用されるもっとも最初のエルフ日付は神話紀2500年である。これをノルド人は最初の年とみなしている。このように、神話紀は一番古い年である神話紀2500年から神話紀1年--キャモラン王朝設立の1年前、独立する都市国家として白金の塔を設立--まで続いた。
ハラルト王の吟遊詩人によると、神話紀2500年にはハイロックのバルフィエラ島にタムリエル最古の建物として知られるアダマンチンの塔の建設が始まった(これは数々の未未発刊のエルフ年代記に記されている、歴史的には大体最古の日付である)。
神話紀初期には、タムリエルの先住民にあたる獣人--カジート、アルゴニアン、オークそのほかの獣人の祖先--がタムリエルのいたる所、文字を持たない社会で生活していた。
神話紀中期には、アルドメリ(エルフの始祖である人間)の難民が、破綻の運命に追いやられた今はなきアルドメリ大陸(「旧エルノフェイ」としても知られる)を去り、タムリエル南西部へと移り住んだ。最初の居住地はタムリエルの海岸線に沿って、広い間隔を取って形成された。後に、タムリエル南西部と中心の方の肥沃な土地に最初の内陸集落が見つかる。獣人がエルフに遭遇し、その洗練された、教養のある、科学的にも発展したアルドメリ文化は、原始的な獣人をジャングルや沼地、山、荒地へと追いやった。アダマンチンの塔は突出して強大な力持つアルドメリ一族のディレニに再発見され、支配された。サマーセット島に水晶塔が建てられ、のちに、シロディールの白金の塔となった。
神話紀中期には、アルドメリの探検家がヴァーデンフェル海岸の地図を作り、第一紀にはハイエルフのウィザードの塔をモロウウィンドのアルド・ルダイニア、バル・フェル、テル・アルーン、テル・モラに建てた。白金の塔(現在のシロディール)のまわりのジャングルにアイレイド(野生のエルフ)の集落が栄えたのもこの時代であった。ハートランドハイエルフとしても知られる野生のエルフは、深遠の暁時代の魔法やエルノフェイの言葉を維持した。表面上、アリノール高王へ捧げられた土地であったが、サマーセット島の独立国とハートランドの長きにわたる関係が、事実上、シロディールを水晶塔にいる高王から引き離していた。
神話紀中後期は高貴なヴェロシ文化の時代であった。現代のダンマーやダークエルフの祖先であるチャイマーは、力強く、野望に満ち、長命なエルフの一族であって、原理主義な祖先崇拝を信奉していた。チャイマー一族は預言者ヴェロシに従い、南西部にあった代々受け継いだエルフの祖国を離れ、今のモロウウィンドに当たる土地に移り住んだ。チャイマーは現世的な文化やドゥーマーの俗悪な慣習を嫌い、またドゥーマーの土地と資産を欲しがったため、何世紀にも渡って小競り合いや領土争いが起こった。自由な発想を持ち、人里はなれたところに住むエルフ一族のドゥーマー(ドワーフ)は科学の謎や工学技術、錬金術に力を注ぎ、現代のスカイリムやモロウウィンドから離れた山脈(のちのヴェロシ山脈)に地下都市や地域社会を築き上げた。
神話紀後期はヴェロシ文化の急落が目立つ。ヴェロシの中には、傾き、放置された古代ヴェロシ塔のそばにある村に移り住むものもいた。この時代、ヴァーデンフェル島からヴェロシの文化は消え去った。ドゥーマーの初期のフリーホールド植民地国家がこの時代から起こり始める。堕落したヴェロシは部族文化へと移行し、やがて現代のモロウウィンドの王宮へと発展し、一方では野蛮なアシュランダー種族へと存続していった。この種族文化が唯一残したものは、ばらばらに崩壊したヴェロシ塔とヴァーデンフェル島のアシュランダー遊牧民である。タムリエルの海岸に沿って建てられた、第一紀ハイエルフウィザードの塔もまたこの時代に打ち捨てられることになった。
またこの頃、文字を持たない人々、いわゆる「ネディックの人々」がアトモーラの大陸(アルドメリ語で「アルトモラ」、もしくは「エルダーウッド」)から移住して、タムリエルの北部に定住した。ノルドの英雄、タムリエルへの巨大植民地軍の先導者であるイスグラモルはエルフ理念に基づいてノルド語のルーン文字を翻字、発展させたことで高い評価を得ている。またイスグラモルは人類初の歴史学者とも考えられている。イスグラモルの軍はスカイリムのブロークン・ケイプの最北端にあるヒサアリク・ヘッドへと上陸した。ノルドはそこに伝説都市サールザルを建てた。エルフは人間を「涙の夜」の時に追い出したが、イスグラモルはすぐに500の仲間を引き連れて戻ってきた。
神話後期にはまた、伝説となった不死の英雄で、戦士で、魔術師で、国王である、ペリナル・ホワイトストレーク、ハラルド・ヘアリー・ブリークス、イスミール、ハンズ・ザ・フォックスなどの名前で知られる人物がタムリエルをさまよい歩き、武器を集め、土地を征服していき、統治し、そのあと自ら築いた王国をぶち壊し、再びさまよい歩くのであった。