「幻惑」と「変性」は混同しやすい。両者ともにそこに存在しないものを作り出そうとするものだからだ。二つの違いは自然界の法則にある。「幻惑」は自然界の法則に縛られることはない。一方、「変性」はその法則に則っている。これだけをみると、「変性」が「幻惑」よりも弱きものであるかのようにみえるが、そうではない。「変性」は誰にでも認知できる現実を作り出す。「幻惑」の作り出す現実とは、その術をかける人とかけられる人のみの間にしか存在しない。

「変性」を習得するには、まず現実が虚偽であるということを受け入れることから始まる。現実は存在しない。我々の現実とは、その自らの慰みのために我々の心に宿すこととなる、より偉大な力を理解することである。その偉大な力が神々であるという者もいれば、神々をさらに超えた何かであるという者もいる。ウィザードにとって、それはたいした問題ではない。肝心なのは、その存在が否定できない形で表現されていることである。主張しつつも、侮辱的な存在であってはならない。

「変性」の呪文をかけることは、現実を放置するより、要求どおりに変えていくことが遥かに簡単なことであることを、より偉大な力に納得させることである。これらの力を感覚的なものとしてとらえてはならない。おそらく、風や水のようなものであるととらえてもらうのが最も良いだろう。永続的であるが、思考を持つものではない。風や水の方向を変えるように、ものを変化させることは、表立って抵抗するより簡単である。呪文をわずかに変えながら唱えると、より成功しやすくなるだろう。