フジャルディング湖沿いに、ノルドで最も勇敢な戦士たちの住居であり軍事行動の拠点である大広間のシルスクがある。

 遠い昔、スコールの小集団が主たる村を離れ、自然崇拝を厳守する同胞たちから自由の身になることを決めた。祖先がスカイリムで送っていたような、殺したい時に殺したいものを殺し、好きなやり方で崇拝できる生活を求めたのである。

 小集団は厳しい天候を物ともせず、南にあるフジャルディング湖に向かい、そこで新たな集落を築くのにぴったりな場所を見つけた。そして、新住居と狩猟小屋とを兼ねた大広間を建築することにした。数ヶ月の建設作業の後、一同は仕事を完成させ、酒場をシルスクと命名した。

 開拓者たちは自分たちが完成させたものを見つめては、その成果に心の底から満足していた。しかしこの幸せは束の間で、誰もがシルスクの建設を喜んだわけではないことがすぐに分かった。広間が建とうとしていたのと同時に、建築に伴う騒音と振動が氷の下で休眠していた古代生物の平安をかき乱してしまったのだ。それは悲劇的で皮肉な展開だった。広間に最後の梁が据え付けられたその時、まどろんでいた怪物はついに目覚めてしまったのだから。怪物は昔ウディルフリィクトと呼ばれていたのだが、死んだと開拓者たちは聞いていた。ウディルフリィクトは完成した広間へとやって来て、長く冷たい眠りの平安を打ち砕いた者たちに復讐を遂げた。何の前触れも容赦もなく彼は殺し、シルスクのノルドは半数になった。凍り付いた湖の下にある巣へと彼をようやく追い返したのは勇敢な妖術師のエルドリッド・アイスライトで、マジカを用いてその入り口を大きな氷の壁で封印した。恐怖は過ぎ去ったが、代償は大きかった。ウディルフリィクトによって与えられた損傷を修復するには2ヶ月を要した。多くの屈強な働き手が失われて、作業は遅く厄介なものであった。

 ついに、誇り高いシルスクは再建された。しかし、広間の建設とウディルフリィクトの撃退に力を合わせた開拓者たちではあったが、誰がリーダーになるかを巡って、すぐに緊張感が高まった。男たちは誰もが、事実上の首領であり、最も屈強かつ有能な赤のフロスムンドがふさわしいと思っていた。しかし青銅兜のドレングルという一人の戦士が反対していた。彼は自分こそがシルスクを統治する能力を誰よりも持ち合わせていると考え、フロスムンドへの反発を声高に表明した。対立や仲違いは苦心の末につかんだ新生活を壊すものでしかないことを知っていた赤のフロスムンドは、彼が良く知る唯一の方法で対処した。大きな斧を振り、その場で青銅兜のドレングルの首をはねたのである。ノルドは他の何よりも戦闘能力を称賛するため、ドレングルを倒したフロスムンドがやはりシルスクの首領にふさわしいと納得した。指導者となる権利を自ら証明したことを他のノルドが忘れないように、フロスムンドはドレングルの首を一番目立つ場所、すなわちシルスクの本堂中央にある台座の上に置いた。

 これを機に、シルスクで最も由緒ある伝統が生まれた。種族や性に関係なく、戦士であれば誰でも、最も感銘を与える戦利品を本堂の台座に置けば、指導者の地位を主張できるようになったのだ。赤のフロスムンドの霊が認める限り、その戦士は首領に任命される。




 フロスムンドの死

 赤のフロスムンドは首領としてシルスクとその住民たちを21年間統治した。穏やかな声と大きな斧を持つフロスムンドは平和と繁栄をシルスクにもたらした。しかし平和がフロスムンドの破滅を招くことになった。屈強なノルドである彼は、酒場のぬくもりと安らかさに、次第に居心地の悪さを感じるようになったのだ。戦いと冒険が恋しくなり、血管が凍り付くようなあの感覚が再び味わえるのであれば、武勲などもう構わないという気になった。血に飢えた巨大な白オオカミがモースリング山で旅人を恐怖に陥れているという噂が広まった時、フロスムンドは大きな斧を手に取り、野獣の退治に一人で乗り出した。山の民は、凶暴なオオカミを意味するオンジャゲという名でこの獣を呼んでいた。雄牛ほど大きな身体と、新雪のように真っ白な毛皮を持つオンジャゲは、この世に生きているどんな男あるいは女であっても倒せない相手だと言われていた。山の民の言葉は真実だった。フロスムンドは凶暴なオオカミの脚1本を切り落としはしたものの、オンジャゲはこの屈強なノルドをむさぼり食い、残されたのは、野獣退治に失敗した男の残酷な体験を思い出させる大きな斧だけだった。悲しみと怒りに満ちたシルスクの住民たちは山に行軍し、彼らがフロスムンドの死と呼ぶようになったそのオオカミを探した。力を合わせることによってどうにか彼らはオンジャゲを仕留め、その肉を焼いて家族で味わった。




 以下が、フロスムンドによる最初の統治以来、シルスクを治めた首領の一覧である:

 赤のフロスムンド。ノルド、男性。青銅兜のドレングルを殺し、その首を戦利品として飾った。シルスクを21年間統治。凶暴なオオカミ、オンジャゲに殺されてむさぼり食われた。

 白波のイスゲロル。ノルド、女性。死霊術師である虫の心のヒルディールを殺し、その心臓を戦利品として飾った。シルスクを4年間統治。

 エイナール。ノルド、男性。氷の巨人グオログを殺し、その足を戦利品として飾った。シルスクを6年間統治。

 太鼓腹のギスル。ノルド、男性。エイナールを殺し、その剣を戦利品として飾った。シルスクを2ヶ月間統治。

 若きエイナール。ノルド、男性。太鼓腹のギスルを殺し、その胃を戦利品として飾った。シルスクを7年間統治。

 グルジョトガロール。ノルド、男性。白魔女カトラを殺し、彼女の杖を戦利品として飾った。シルスクを2年間統治。

 アメリエ・ボンテコウ。ブレトン、女性。グルジョトガロールを殺し、彼の頭を戦利品として飾った。シルスクを3年間統治。

 嵐殺しのソロルムル。ノルド、男性。アニとアリの兄弟を殺し、彼らの魔法のハンマーを戦利品として飾った。シルスクを16年間統治。

 アエギリエフ。ノルド、女性。浮気者オドニーを殺し、彼女の手を戦利品として飾った。シルスクを8年間統治。

 カッチーノ・アウレリア。インペリアル、男性。インペリアルの英雄クラウディウス・アンジオーネを殺し、彼の剣を戦利品として飾った。シルスクを3週間統治。詐欺師。

 熊皮のエルジャール。ノルド、男性。インペリアルの詐欺師カッチーノ・アウレリアを殺し、彼の舌を戦利品として飾った。シルスクを5年間統治。

 太っちょファルキ。ノルド、男性。狂犬病にかかった6匹のオオカミの群れを殺し、そのかぎ爪を戦利品として飾った。シルスクを3ヶ月間統治。狂犬病によって正気を失い、死亡。

 ナイフのスヴァナ。ノルド、女性。オオカミの子グレッタを殺し、彼女の剣を戦利品として飾った。シルスクを4年間統治。

 白ひげのベイニール。オークの侵略者3人を殺し、その目を戦利品として飾った。シルスクを22年間統治。

 オオカミ走りのスクジョルドル。ノルド、男性。ウィザードの黄色のグリスを殺し、彼の首を戦利品として飾った。シルスクを3年間統治。広間で殺された。

 ここに、歴史の記録がない期間が挟まる。ある時点までウディルフリクトのことはきっちりと扱われているのだが、この時代にシルスクを治めた指導者の記録はない。記録が再開されるまでに、どうやら何人かの首領が入れ替わったようである。シルスクは口頭伝承にこだわっているため、それらの名前は永遠に失われたと言えるかもしれない。

 巨像ギルグン。ノルド、男性。悪意のスジョルドを殺し、彼の脳を戦利品として飾った。シルスクを6年間統治。

 石のヴィベケ。ノルド、女性。インペリアルの海賊8人を殺し、その兜を戦利品として飾った。シルスクを3年間統治。

 未熟者のフジャルクニル。ノルド、男性。スプリガンの森を丸ごと殺し、その主根の心臓を戦利品として飾った。シルスクを27年間統治。

 大胆なブジョルド。ノルド、女性。イルファルクの巨獣を殺し、その胃を戦利品として飾った。本稿執筆の時点でシルスクを統治中。




 拡大:

 シルスク広間は今日でも創立当時とほぼ同じ姿を留め、建築技術の質の高さを示している。だがシルスクそのものは成長しなくてもその居住者たちは成長し、間もなく、大広間はそこに住みたいと願う者全員を収めきれなくなった。そのため、長年の間に多くのノルドがシルスクを離れ、島にあるたくさんの洞窟や自然の隠れ場所を利用して、ソルスセイムの荒野に自分用の住居を築いた。しかしそうやって離れた者たちもシルスクでは温かく迎えられるため、多くの者たちが頻繁に戻ってきて酒場のもてなしを楽しんでいる。また、最初の小集団がスコールの村を出てから長い年月が経っているにもかかわらず、スコールとシルスクのノルドは互いに好意的であり続け、時には資源の取引さえしていることも、特筆に値するだろう。




 レイヴン・ロックとの関係:

 シルスクのノルドとレイヴン・ロックとの関係は、帝国の存在がソルスセイムでより認知度が高かった頃、帝国と保持していた関係と同じである。つまり、そこにあるのは意図的な無関心と問題の欠如だ。両者共に、相手が存在しないともとtもらしく信じていれば平和を保てるのだ。だからといって確執などがあるわけではなく、ただ単に文化が非常に異なる両者間では交流する理由がないといえるだろう。




 シルスクの法と秩序:

 広間内では、必要があれば首領が裁判官、ジャッジ、死刑執行人を務める。実際のところシルスクは常に非常に平和な場所であり、仲間意識と善意が当たり前である。シルスクのノルドは、ソルスセイムは過酷な住居であるため、互いに争い合うぐらいなら島の熊、オオカミ、ドラウグル、リークリング、その他、この地をうろつく凶暴な生き物と戦うほうがよっぽど生産的であることを知っていた。とはいえ、時には対立が生じる。それが流血に終わることもなくはない。また数年に一度はシルスクを我が物にすべく、首領に血の決闘を挑む者が現れる。大まかに言えば、シルスクのノルドは幸せな蛮族の大家族のようなものだ。またどの家族もそうであるように、彼らの間にも小競り合いがある。




 灰の時代:

 レッドマウンテンの大噴火以来、ソルスセイムの南地区は塵に覆われ、ダークエルフに占有されている。しかしシルスクは荒廃した地域からちょうど外れた位置にあり、この地の大半を襲った破壊からは運良く逃れられた。以来、シルスクは“安息の地”としての役割をことさら真面目に果たしてきた。彼らは手厚いもてなしを心がけ、南の灰の大地、あるいは北の寒冷地からの救済を求めるよそ者を温かく迎えている。